エル ELLE (2016)
分類を拒む一人の女の自画像
by 10days1movie · 公開 2026-09-18
| 区分 | 映画 |
|---|---|
| 監督 | ポール・ヴァーホーヴェン |
| 出演 | イザベル・ユペール, ロラン・ラフィット, アンヌ・コンシニ, シャルル・ベルリング, ヴィルジニー・エフィラ |
| 公開 | 2016 |
| ジャンル | ドラマ, スリラー |
| 上映時間 | 130分 |
映画は一人の女が自宅で侵入者に暴行される場面で始まる。衝撃的な導入だが、もっと衝撃的なのはその次だ。被害者は悲鳴を上げて崩れる代わりに、割れた食器を片づけて浴槽に身を浸し、夕食に寿司を注文する。ポール・ヴァーホーヴェンは観客が当然期待する反応を最初の場面から拒む。『エル ELLE』は被害と復讐という馴染みの枠を持ってきて、そのすべてのルールをねじってしまう、分類しにくい作品だ。
どんな映画か — 通報せず自ら犯人を追う女
ミシェル(イザベル・ユペール)はビデオゲーム会社を経営する成功した事業家だ。彼女は自分を襲った犯人を警察に通報する代わりに、自ら追跡することにする。しかし映画は単純な追跡劇に流れない。ミシェルの日常は、崩れた結婚生活、無能な息子、新しい恋人に出会った母、そして過去に父が犯した恐ろしい事件という影で複雑に絡み合っている。犯人の正体が明らかになった後もミシェルは予想外の選択を重ね、観客は彼女が何を望んでいるのかを最後まで断定できなくなる。

演出 — 衝撃を冷たく観察する距離感
ヴァーホーヴェンの演出は驚くほど冷静だ。彼は衝撃的な事件を扱いながらもカメラを興奮させない。むしろミシェルの日常を乾いて精密に追っていき、観客が道徳的な判断を下す隙を与えない。この距離感が映画を居心地悪くも魅惑的なものにする。事件を刺激的に消費せず、人物の制御力と欲望を観察することに集中するからだ。
彼はまた、ブラックユーモアを随所に隠しておく。家族の食事の席での気まずい会話、会社の社員たちとの神経戦、隣人との微妙な緊張は、重い主題の間で奇妙な笑いを醸し出す。おかげで『エル ELLE』は一貫したトーンを拒みながらも、決して散漫にならない。ジャンルの境界を自由に行き来するこのバランス感覚こそ、老練な演出の証拠だ。
演技 — 規定されることを拒むユペールの独壇場
この映画は事実上イザベル・ユペールの独壇場だ。彼女はミシェルを被害者としても、加害者としても、英雄としても規定しない。ユペールは表情一つ、眼差し一つで人物の複雑な内面を露わにするのだが、その抑制された演技のおかげでミシェルは最後まで神秘的な存在として残る。怒りと冷笑、欲望と恐怖が一つの顔の中に共存するこの演技は、どんな説明も必要ないほど圧倒的だ。ユペールでなければこの危ういキャラクターが説得力を得ることは難しかっただろう。周囲の人物を担った俳優たちもミシェルの世界を緻密に満たし、映画の密度を高める。

映画が語るもの — 被害者らしさという固定観念の試験
『エル ELLE』は観客が人物を手軽に理解しようとする欲求そのものを試す。私たちは暴力の被害者がどう振る舞うべきかについての固定された像を持っているが、ミシェルはその像に当てはまることを拒む。映画は彼女の選択を擁護も非難もせず、一人の人間が自らの人生をどんな方法であれ自分で制御しようとする、その意志だけを最後まで追っていく。正解を提示しないという点が、この映画を居心地悪くも、自由にもする。
評価とレビュー
OMDb基準でIMDbの評価は10点満点中7.1点だ。ロッテントマトの鮮度は91%、メタクリティックのスコアは100点満点中89点で、批評家の評価が非常に高い。カンヌ映画祭のコンペティション部門で公開された後、イザベル・ユペールの演技はその年最も熱い話題となり、彼女はこの作品でいくつもの授賞式で主演賞を手にし、アカデミー主演女優賞候補にも上がった。

総評
『エル ELLE』は気軽に薦めにくい映画だ。題材は重く、人物の選択はしばしば私たちの常識に逆らう。しかし一人の人物をこれほど複雑で立体的に描き出した作品は珍しい。道徳的な判断をしばし手放して一人の女の自画像を最後まで見つめる準備ができているなら、この映画は忘れがたい体験を残す。ユペールの演技だけでも★4.0は十分だ。
こんな方におすすめ
- 善悪で分けられない複雑なキャラクターが好きな方
- イザベル・ユペールの代表作の演技を観たい方
- ジャンルの慣習をひねる挑戦的な映画を探す方
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