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パーソナル・ショッパー(2016)レビュー — 空洞にした映画が作り出す不思議な充実感 映画 ポスター

パーソナル・ショッパー (2016)

空洞にした映画が作り出す不思議な充実感

★★★★★ ★★★★★ 4.5

by 10days1movie · 公開 2026-06-16

区分 映画
監督 オリヴィエ・アサヤス
出演 クリステン・スチュワート, ラース・アイディンガー, シグリッド・ルスベック
公開 2016
ジャンル ドラマ, ミステリー, スリラー
上映時間 105分

パーソナル・ショッパーはスリラーのように始まってジャンル映画になることを拒む。幽霊は出るがホラー映画ではなく、ミステリーがあるが解決されない。それでもクリステン・スチュワートが生み出すモーリンというキャラクターの前で105分は不思議なほど没入して流れていく。★4.5。

どんな映画か — 霊媒でありパーソナルショッパーである女

モーリン(クリステン・スチュワート)はパリで有名な芸能人のパーソナル・ショッパーとして働いている。高級ショップを回って雇用主の服やアクセサリーを購入するが、それを自分で着ることはできない。彼女にはもう一つのアイデンティティがある。霊媒師だ。最近双子の兄が心臓の異変で亡くなり、その前に二人は先に死んだ方が死後もサインを送ることを約束していた。モーリンは兄が住んでいた家でそのサインを待っている。ある日からモーリンのスマートフォンに正体不明のメッセージが届き始める。

パリの屋外テラスで犬と共に一人座っているモーリン

演出 — テキストメッセージが恐怖になるとき

オリヴィエ・アサヤス監督はこの映画でジャンルの枠を意図的に揺さぶる。幽霊シーンはあるが恐怖の道具ではなく、モーリンの内面状態を外在化したもののように機能する。スマートフォンのメッセージのシークエンスは現代の生活においてコミュニケーションがいかに正体不明の脅威になりうるかを示しており、このシーンが奇妙なほど怖い。テキストメッセージという最も日常的な媒体が恐怖の源になる。

映画はパリの空間を独特に使う。華やかな衣装と高級品で満ちた世界とモーリンの空虚な内面の対比が視覚的に体現される。雇用主のドレスを密かに着てみるシーンはこの映画で最も強烈な瞬間の一つだが、単純な禁忌の侵犯ではなく、他人の人生に一時入り込んで自分の存在を確かめようとする行為のように見える。

演技 — 表情の下に流れる悲しみ

クリステン・スチュワートはこの映画でカンヌ映画祭の女優賞に近い評価を受けた。彼女がこの役で見せるのは感情を消した表情の下で絶えず流れる何かだ。セリフは多くなく、ほとんどの場面で一人だったり画面の中の存在と会話しているが、モーリンの悲しみと不安、そして奇妙な勇気が皮膚から感じられる。このような内向的な演技を説得力を持ってやり遂げることがいかに難しいかを考えると、より印象的だ。

ホテルの部屋のベッドでスマートフォンのメッセージを見つめるモーリン

映画が語るもの — 喪失が残した境界の感覚

パーソナル・ショッパーは表面的には幽霊の話だが、その中で語ることは喪失が残す空白とアイデンティティの混乱だ。モーリンは兄がいない世界で自分が誰なのかを分からなくなっている。パーソナル・ショッパーという職業は他人の欲望を代行する仕事であり、霊媒師というアイデンティティは生者と死者の間にいる存在だ。この二つの役割どちらにおいても彼女は境界にいる。映画全体がこの境界感覚の上に立っている。

スマートフォンのメッセージの正体が最後まで明確に明かされないのも意図的だ。重要なのはそれが兄かどうかではなく、モーリンがその不確実性の中でいかに自分と和解するかだ。

評点と評価

パーソナル・ショッパーは2016年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に進出し、オリヴィエ・アサヤスが監督賞を受賞した。しかしカンヌの上映当時、野次と喝采が同時に起きたというエピソードがあるほど反応が両極に割れた。TMDB評点は5.9と低い方で、IMDbは6.1水準だ。ロッテントマト新鮮度は81%だ。批評家は概して高評価だったが一般観客の間では「何も解決されない」という不満も少なくない。明確な結末と解消を求める観客には失望することのある映画だ。

パリの通りでカルティエのショッピングバッグを持って出てくるモーリン

惜しい点

後半に登場する殺人事件が映画の流れの中でやや異質に感じられる。この要素がミステリーの物語のために挿入されたのか、モーリンの心理をより極端に追い詰めるためのものなのか意図が不明確だ。また映画が意図的に開けておくことが多いため、鑑賞後にこの映画が何を語ろうとしたのか整理しにくいという点は、観客によっては長所でも短所でもある。TMDB評点が相対的に低い理由もこの曖昧さのためだと思われる。

総評

パーソナル・ショッパーは好きな人と嫌いな人がはっきり分かれる映画だ。答えを出さず感覚を与える映画、ジャンルの心地よさの代わりに不快な余韻を残す映画が好きなら、この作品は長く記憶されるだろう。クリステン・スチュワートの演技を再評価するきっかけになる作品でもある。★4.5。

こんな方におすすめ

  • 明確な解消より感覚的な余韻が好きな方
  • クリステン・スチュワートの演技に興味のある方
  • フランスのアート映画に親しんでいるか、入門しようとしている方
  • アイデンティティと喪失を扱った実験的なドラマを探している方

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