アス (2019)
恐怖よりも怖いのは自分自身だった
by 10days1movie · 公開 2026-08-27
| 区分 | 映画 |
|---|---|
| 監督 | ジョーダン・ピール |
| 出演 | ルピタ・ニョンゴ, ウィンストン・デューク, エヴァン・アレックス, エイリース・エヴァンス |
| 公開 | 2019 |
| ジャンル | ホラー, ミステリー |
| 上映時間 | 116分 |
自分の分身が現れて家族を脅かしたらどうするか。ジョーダン・ピールの2作目の監督作アスはこのぞっとするような前提をホラー映画の外皮の下に置き、その内に遥かに複雑な物語を隠している。評価は★4.0。ゲット・アウトほどすっきりしていないが、それ以上に不快な問いを長く残す作品だ。
どんな映画か — 自分とそっくりの分身が訪れる
アデレード(ルピタ・ニョンゴ)は幼少期に経験したトラウマを抱えたまま家族とともにカリフォルニアの海辺の別荘に休暇に出かける。その夜、私道に彼らと全く同じ顔をした4人の見知らぬ人物が現れる。赤いジャンプスーツを着てはさみを持っているこの分身たちは「テザード」と呼ばれ、単純な侵入者ではなく、何かより深い脅威であることが明らかになる。映画の本当の恐怖はこの存在たちの起源が明かされる瞬間から始まる。レッドと呼ばれるアデレードの分身は声が違い、動きが違い、目つきも違う。ルピタ・ニョンゴがこの二つの人物を同じ顔で区別して演じるということが最初から最後までこの映画の核心的な妙技だ。

演出 — 二つのアイデンティティを一画面で衝突させる
ジョーダン・ピールはホラーというジャンルの文法を正確に知って活用する監督だ。緊張の高低を調節する腕前が優れており、特にテザードの脅威が初めて具体化される場面は確実に心拍数を上げる。色彩と照明、そしてルピタ・ニョンゴの二重演技を通じて二つのアイデンティティが同じ画面の中で衝突するように構成している。映画全体に配置されたシンボルを丁寧に見ると後で大きな絵と繋がる。
演技 — 一つの顔で二人を分けたニョンゴ
ルピタ・ニョンゴの二重演技がこの映画の核心だ。恐怖を抱えた普通の母親と、寒気を覚えるような声で語る分身レッドを同時に体現するが、二つのキャラクターの質感が明確に異なるため同じ俳優が演じているという事実を絶えず実感させられる。アカデミーの演技賞にノミネートされなかったのが不思議なほどだった。ウィンストン・デュークはホラーの雰囲気とブラックコメディを自然に混ぜ合わせてバランスを取っている。

映画が語るもの — 抑圧された階層が地上へ上がるとき
テザードの存在はアメリカ社会の中で抑圧されてきた階層についてのアレゴリーとして読める。地下で地上の生活を真似しながら生きてきた者たちがついに地上に上がって復讐する。ジョーダン・ピールがこの構図を単純な善悪の対立で終わらせないという点がこの映画をより不快にする。最後の反転はどちらが本当の「われわれ」かという問いをひっくり返す。その問いは劇場を出た後も長くついてくる。
評価とレビュー
IMDb評点は6.8で、ゲット・アウト(7.7)より低い。ロッテントマトの新鮮度は93%で批評家からは好評を受けたが、観客スコアは60%台と分かれている。批評家はジョーダン・ピールの演出とルピタ・ニョンゴの演技を絶賛したが、テザードの存在の設定についての説明が過度に複雑で論理的な欠陥が大きいという批判もかなりある。

残念な点
テザードの存在の方法が具体的に説明される瞬間、むしろ映画の恐怖が薄れる。説明が具体的すぎてかえって欠点が際立つ。ゲット・アウトが社会的テーマをジャンルの文法の中にすっきりと溶かし込んだとすれば、アスはテーマが大きすぎてプロットと衝突する感覚がある。この不均衡が映画の後半で没入感を揺さぶる。
総評
完成度の面では前作より均一ではないが、野心においてははるかに大きい。ルピタ・ニョンゴの演技とジョーダン・ピールの演出の感覚が結合した場面は確かに刻印される。ホラー映画を単純なジャンル物として置かず不快な社会的省察へとつなげる方法は興味深い。欠点を受け入れられるなら十分に観る価値がある。2回観ると最初に見えなかった伏線が目に入るが、それ自体がこの映画の完成度を示す部分だ。ジョーダン・ピールがゲット・アウトの成功を機にどの方向へ向かおうとしているかを確認できる作品でもある。★4.0。
こんな方におすすめ
- 社会的メッセージのあるホラー映画を好む方
- ルピタ・ニョンゴの演技が好きな方
- ゲット・アウトが良かったのでジョーダン・ピールの次作が気になる方
コメント